嶽神伝

死地 ~嶽神伝~(長谷川卓 著)

南稜七ッ家 二ッ 再びの主役

 嶽神伝の最終章はこの「死地」となります。南稜七ッ家の二ッが第一章で見事に主役を飾って幕明けした嶽神伝シリーズ、最終章も二ッが主役で幕引きです。第一章の血路では十代~二十代の二ッでしたが、この死地では55歳~62歳まで(勝手に計算しました)が描かれています。

 このシリーズを通して(時系列順に読んでです)ずいぶん長い間、二ッや無坂と一緒に山の民の生活をしていたような気がします。感慨深い一冊です。

登場人物も大出世

 かつて、二ッが20歳の時、山を流れ歩いていたときにたどり着いた集落で「日吉」という少年と出会いました。日吉はこの時12歳。二人は山の者の慣習で、お互いを「日吉」「叔父貴」と呼び合い、一緒に山を駆けまわる時期がありました。

 この日吉が後の木下藤吉郎、名を改め羽柴秀吉(豊臣秀吉)と大出世をして二ッの前に再び現れます。果たして二人は昔の二人として交流ができるのか否か、35年ぶりの再会となっています。

登場する豪傑たち

 今作で登場するのは南稜七ッ家の面々。血路でもその武勇(武士でも忍者でもありませんが・・)を存分にみせてくれました。そして羽柴秀吉。秀吉を守る森の民、錣一族の面々。柴田勝家、この勝家が南稜七ッ家に落としの依頼をします。この巻で滅びを迎える北条幻庵と風魔一族。

 この三者バトルが今回の戦いのメインとなります。それにしても、山の民にとどまらず、森の民が出てくるとは・・。しかも強すぎです・・。風魔も変わらず強いので、誰が生き残るのかは全く予想できません。

時代は賤ケ岳の戦い~北条討伐まで

 賤ケ岳の戦いの勝利で信長後継者として確固たる地位に昇りつめた羽柴秀吉ですが、自身の過去、生い立ちには強烈なコンプレックスを持っていました。自分の過去の情報は闇に葬ってしまいたい、そんな欲求からなかなか逃れられません。様々な思惑と各々の立場が、悲しくも望まない戦いへと発展してしまいます。大活劇時代小説なので当たり前なのですが、登場するみんなには平和に仲良く暮らしていてほしかった・・と妙に感傷的にさせられました。

そして二ッと日吉は・・

 望まぬ形で運命の糸に手繰られた七ッ家の二ッと日吉(羽柴秀吉)ですが、さてその後は・・・これはさすがに内緒です。タイトルの死地からもいろいろ想像してみてくださいね。とにかく二ッが主役でよかった。こんなにもかっこいい生き様があるんですね。山の民、大好きです。

Rogueだけど冒険と自然と本が大好きなHunter&Writer