UMA,  動物,  自然

漂泊の牙(熊谷達也 著)

謎の野獣が引き起こす凄惨な事件

 新田次郎文学賞受賞作「漂泊の牙」は、人間と獣の壮絶な死闘を描いた傑作冒険小説です。ここでいう獣とは野犬とおぼしき野獣を指しています。東北の雪深い山奥で、ある時主婦が野犬と思われる野獣に食い殺されるという凄惨な事件が発生しました。

 なんとその現場付近では、絶滅したはずのニホンオオカミを見た、という目撃情報が・・。

 解明がいそがれる中、次々と謎の野獣による犠牲者が増えていきます・・。

ニホンオオカミの仕業か?

 犯行は幻のニホンオオカミの仕業なのか?

 なぜ突然に姿を現して人を襲い始めたのか?

 愛する妻を野獣に殺された動物学者が、まさに一匹オオカミの如く、執拗に野獣を追い詰めていきます。果たして野獣の正体は・・。突如姿を現して人々を襲った真相は・・?

 こういった感じで物語が展開していくのですが、まずはこの野獣の正体は何なんだ?という疑問になかなか答えがでてきません。読み進めてもいっこうに正体がつかめないのです。ニホンオオカミという期待もあり、ハイイロオオカミなのでは?という疑問もあり、大型の野犬、はたまた全く違う動物なのかUMAなのか、決定的な答えが見つからないまま進行していきます。

一気読み必至です

 気になって仕方がないので、ついつい一気読みになってしまいます。主人公を始め、魅力的な登場人物たちが作り上げる人間模様、世界観、自然との関わり方、そして真相に至った時の更なる驚きの展開とまったく気が抜けません。一度ならず二度読みしても更に味わい深い小説です。

 熊谷さんは東北地方を題材に、山で暮らす人々や動物、自然を数多く執筆しています。これらのお話で一貫しているように感じるのは「本来持っていた気高く強い人間の姿・いつしか喪失しまった大切なもの」を問いかけているような気がします。勝手な解釈ですが・・。

 いずれにしても熊谷さんは大好きな作家なので、また別作品を勝手に紹介していきたいと思います。

 

Rogueだけど冒険と自然と本が大好きなHunter&Writer