嶽神伝(長谷川卓 著)時系列
嶽神伝シリーズとは
戦国乱世の時代、主君を持つこともなく、村で生きることもなく、国や村を離れて人里から遠く離れた奥深い山中に集落をつくり、自分たちのルールに従いながら自由に生きる人々がいました。里の人達は、そんな奇異な生き方をする人々を蔑みながら「山の者」と呼びます。
里の窮屈な掟の中で生きることを良しとしない山の者は、自分達の掟を何よりも重んじ、日本中の山中に分かれて散らばりながらも、「集落の人間」を、そして「家族」を何より大切とし、厳しい自然の中でお互いに助け合いながら平和に暮らしていました。
そんな山の者達が、戦国の動乱のなか、最も避けたかった里の争いに、国の争いに、否応なく巻き込まれてしまいます。言い伝えでは、この「山の者」たちの集団の中から「数年から数十年に一人、とてつもない知力と力にたけた者が出る」と伝えられていました。
その心根はあくまで清く、出会った者は皆、その心に打たれる、と言います。山の者たちはそうした者のことを「嶽神」と呼びます。山の者たちの生き様を追いながら、「嶽神」とは何か、という問いの答えを探しながら、山の者たちが乱世の時代をどう生きるのかを描く時代冒険活劇、これが嶽神伝シリーズです。
時系列1「嶽神伝 血路」
★年代は1542年~1548年
★主人公は山の者衆「七ッ家」の「二ッ」
★甲斐の武田信玄の忍び集団「かまきり」と山の者「七ッ家」の戦いが描かれます。定住地を持たない謎多き集団「七ツ家」と、山の者シリーズでトップクラスの実力を誇る「二ッ」が最強忍者軍団と激突します。
嶽神シリーズはここから始まります。
2「嶽神伝 無坂 上下」
ブログタイトルでもありニックネームでも使用しています。シリーズを通じて主役と呼べる人物。
★年代は1542年~1548年
★主人公は山の者「小暮衆」の無坂
★血路と同時期のお話ですが、小暮衆もまた武田の忍び「かまきり」とやむなく激突してしまいます。血路のラストと無坂のラストが繋がっていきます。
3「嶽神列伝 逆渡り」
★年代は1547年~1549年
★主人公は山の者「四三衆」の「月草」
★北信濃で上杉謙信と武田信玄が熾烈な戦いを繰り広げるなか、山の者、「四三衆」月草が、亡き妻との思い出の地へと、長く切なく険しい旅路にむかいます・・。「嶽神伝・無坂」で活躍した月草が、集落へ戻った後のお話です。
4「嶽神伝 孤猿 上下」
★年代は1549年~1555年
★主人公は小暮衆の無坂・二ッと月草も活躍
★武田の忍び「かまきり」に加え、北条の忍び「風魔」、上杉の忍び「軒猿」、さらには織田信長が放った忍びの刺客「鶴喰」、信玄の父、信虎が放った忍び「飛び加当」が入り乱れ、山の者と乱戦を繰り広げていきます。山の者は忍びではありませんが、忍びVS山の者は忍者大戦の様相です・・。
5「嶽神伝 鬼哭 上下」
★年代は1556年~1570年
★主人公は小暮衆の無坂・二ッと月草も活躍
★出奔した上杉謙信を武田の「かまきり」から守る山の者。里では桶狭間の戦い、川中島の戦いなど、時代は風雲急を告げていました。
6「嶽神伝 風花 上下」
★年代は1570年~1582年
★主人公は小暮衆の無坂・二ッと月草も活躍
★武田家の終焉。壮年期から老年期を迎えた山の者、無坂が最後に選ぶ人生の結末は・・。
7「嶽神(上)白銀渡り・嶽神(下)湖底の黄金」
★年代は1582年
★主人公は「涌井谷衆」の多十
★武田家滅亡後の隠された黄金を狙い、真田と伊賀の忍びが動き出します。黄金の情報を持つと思われる多十達を執拗に追い始め、多十は大切な何かを守るために必死に戦い続けます・・。
8「嶽神伝 死地」
★年代は1583年~1590年
★主人公は南稜七ッ家の「二ッ」
★賤ケ岳の戦いに巻き込まれる七ッ家。
老いた二ッの最後の闘争を描きます。
シリーズ全8作 13巻
全8シリーズ中、小暮衆の無坂を主人公として描いているものが4作もあります。無坂を中心に戦国の時代も描かれていますね。2作は南稜七ッ家の二ッ。1作は四三衆の月草。1作は涌井谷衆の多十がそれぞれ主人公となっています。
すべての作品が繋がっていて、時系列順に読むとワクワクが止まりません。勝手に時系列で宣伝しましたが、時代小説の要素に冒険活劇、忍びに戦闘、一気読み必至のおもしろさです。それにしても文庫本の表紙のかっこいいこと。鳥肌級のかっこよさです。
武将や参謀、家臣もたくさん登場します。武田家、諏訪家、今川家、北条家、徳川家、織田家、上杉家などなど、こんな史実でも面白いな・・と思いながら読むと楽しいと思います。